苦笑いする彼から250円を受け取ると、

彼は犯人を目の前に文句の一つも言わず、呆気なく部屋へ戻ろうとした。








「じゃあな」



「え…

あ、ちょっと待って下さい」



「…?」



「あの…

後で友達にも、ちゃんと謝らせに来ますね」



「いいって、別に」







彼はそう言って歩き出し、私は再び呼び止めた。








「私、千秋って言います。


お兄さんは、何て言うんですか?」







階段の辺りで振り返り、先ほど見せてくれた優しい笑顔を向けながら、彼は私の問いに答えた。








「竜一」








彼はそう一言だけ答えると、階段を上がって部屋へ入って行った。








(竜一くん…か)