素通りするつもりだったが、彼の行動が気になった私は、

無謀にも、声を掛けてしまう。








「…あ、あのう」







タイヤを蹴りながら、チラッと振り返る彼。







「な…何してんですか?」



「……。」







恐る恐る尋ねると、彼はマスクを取り、視線を私からバイクに戻しながら、無愛想に答えてくれた。








「ズレてんだよ。

ハンドルとタイヤの軸」




「軸がズレてる?」




「ああ。

どっかのバカが、力任せに無理やりロック折ったから、ハンドル真っ直ぐにしてもタイヤが外側向いてんだ」




「へ…へえ、そうなんすか…」







両手を後ろで組みながら、白々しくタイヤを覗き込む、犯人の仲間。