その理由(わけ)を聞かされていないから余計に……。


でも、理由(わけ)を聞かれても、私自身もどうしてこうなってしまったのかわからないんだ。


少なくとも小学生の頃は軽く人見知りする程度で、身体が強ばってまともに会話を交わすことが出来ない、なんてことはなかったから。


きっかけとなる出来事は恐らくあったはずで、だけど私はそれをずっと思い出せずにいる。


この先のことを考えるなら、忘れちゃいけなかったはずなのに……。



「……凜?どうかした?」

「えっ?……あ、ごめんね。ボーッとしちゃってた」

「なら、いいけど──」


藍が何か言いかけたちょうどそのとき、教室の扉が勢いよく開いた。