「ひなー、これから3on3やるから審判頼む」

「うん、わかった!」

「今日は何を賭けるよ」

「やっぱあれしかないっしょ。月曜限定の特大焼きそばパン!」

「お~いいじゃん!負けたほうが焼きそばパンのパシリな」

「それとひなちゃんとのランチ権も追加で!」

「えっ、え…私?」

「はーい!さんせーい!」

「むしろそっちがメインだよなあ」


飛び交う会話の矛先が私に向けられ戸惑っていると、「ひなを賭けに使うなー」と苛立ちを含んだ声が上がる。


光希(こうき)だってひなちゃんと一緒に昼飯食いたいっしょ~?いいじゃんいいじゃん」

「ひなをゲームの賭けにするなって言ってんの」

「うははっ!光希くんは今日も過保護ですね~」

「過保護が過ぎると嫌われちゃうよー?」

「うるせえ!」

「ぶちょーこわーい」

「うるせえ!!」


ボールを強くバウンドさせながら声を荒げているのは部長である光希。ケラケラと笑いながら他の部員たちもウォーミングアップに戻っていく。


そんな皆の会話が微笑ましくて、思わずふふっと笑みが零れる。


コート脇に置いたパイプ椅子に座り、弧を描くボールを目で追う私はこの男子バスケ部のマネージャーだ。