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最寄りの駅を降り、緩やかな坂道を5分ほど上ると、その高台に私の通う高校が見えてくる。


開校当初は女子校だった名残か、校舎の外観はお上品な薄ピンク色。グラウンドは他の高校に比べて小さく、女子生徒の割合が男子生徒を若干上回っている。


『吹奏楽部 東北大会金賞受賞』
『磐田恵さん 女子柔道個人 県大会優勝』
『××年度 国公立合格者52人』


文武両道をモットーとしている我が校は、県内でも偏差値は上位の方。部活動も盛んで、校舎入口には大きな懸垂幕が掲げられている。


毎朝挨拶運動をしている生活委員の生徒もまだ来ていない時間帯。大きな正門を1人で抜け、その足で向かうのは教室ではなく体育館。


重めの扉を両手で開けると、体育館特有の香りが鼻を抜ける。


「おはようございまーす」


起ききっていない声帯を震わせ、大きめに声を上げると、それまで聞こえていた音が一斉に止み僅かな静寂が生まれる。


「おー、ひな、、おはよう」


ひとつの声を皮切りに無数のおはようが返ってくる。


もう1度「おはよう」と口にしながら中へと足を進めると、再びボールの跳ね返る音が体育館中に響き渡る。