「えっ!先輩、こんなに暑いのにココア飲むんですか?!」


容赦なく照り付ける日差しに顔が上げられず、地面に視線を向けながら歩いていると、自販機の方から聞こえてきた声。どうやら先客がいたよう。


「まさか!これは柊くんの分!」


聞こえてきた名前に思わず顔を上げた。


自販機の前に立つジャージ姿の2人組は、水戸さんと後輩マネージャーだろうか。


半袖シャツを肩まで捲し上げている後輩の子の両腕はペットボトルで埋まっている。


「なるほど!柊先輩甘いもの好きですもんね」


「(やっぱり、そうだったんだ…!)」


ファストフード店でアップルパイとチョコシェイクを頼んでいた柊くんの姿を思い出す。


「これは柊くんの勝負ドリンクなの」

「ええ、ココアがですか?いくら冷えてるとはいえこの暑さでココアって、なんかいやじゃないですか?」

「うん、私は嫌。でも柊くんは昔から気合いを入れる時は甘いものを飲んだり食べたりしてるんだって。だから大事な試合の前には必ず甘いものを差し入れするようにしてるの」

「へえ、そうだったんですね!水戸先輩、柊先輩のこと詳しいんですね」

「直接じゃなくて大河原くんに教えてもらっただけだけどね。ちゃんと覚えておいて?柊くんに気合いを入れてもらうためにはとにかく甘いもの!」