横断幕が吊るされた手すりから少し身を乗り出して、真下にいる光希へ「なーに」と声を張る。


「俺らこのままCコート向かうわ。そっから俺のスポドリ投げてくんね?」

「えっ、ここから?危ないよ」

「へーき」

「ええ…」


「はやく」と急かされるので言われるがまま、 ''黒津'' と書かれたペットボトルをクーラーボックスから取り出す。両手を広げる光希へ「いくよ」と声をかけて、出来るだけそっとペットボトルを落下させた。


「さんきゅ」

「私たちも準備が出来次第向かうね」

「重い荷物は戻った1年に持たせてな」

「はーい。ありがとう」


右手を挙げて立ち去る光希に手を振る。私も荷物を纏めるため席へ戻ろうとした時、離れたところから複数の視線を感じた。


目線を左へスライドしていくと、先ほどと同じ場所で立ったままこちら側を見ている白石東の3人が視界に入った。


私が顔を向けたことに気付いた大河原くんは、隣にいる柊くんへと何やら話しかけた。大河原くんへ視線を向け直した柊くんは、綺麗な顔を僅かに歪める。


この距離では当たり前に声は聞こえない。佐野くんも混ざって3人で言葉を交わし合っている様子を、立ち竦んだまま見下ろす。


そうしてすぐ、柊くんの顔がもう1度私の方へと向けられた。


「(えっ……)」


目の前の光景に心の中で声が漏れた。