もしも今日、柊くんとすれ違うことがあったとして、どういう対応をするのが ''友達'' として正しいのか。


見ないフリをするのもなんだか失礼な気がするし……、かといって馴れ馴れしく声をかけるなんてそんなことはできないし……。


上から柊くんの姿を見下ろしながら、頭の中でぐるぐると思考を巡らせる。最終的に友達ってなんだっけ?と哲学的な疑問へと辿り着いてしまう。


そんなことを考えているうちに開会式は終わっていて、各部員たちはぞろぞろと動き始めていた。


「ひな先輩。私たちはどうしますか?」


後輩マネージャーの亜美ちゃんが横から私の顔を覗き込む。


「私たちは第一試合がCコートだから……、サブアリーナのほうに移動だね」


今朝配られたプログラムを広げながら、試合の場所と時間を確認する。


「皆が戻ってきたらすぐに移動できるように、必要な荷物を纏めておこっか」

「はい!そしたら私、タオルと備品類持っていきますね」

「うんお願い。ドリンクの入ったクーラーボックスは重いから、男性陣に頼んじゃおうかな」

「1年男子にやらせちゃいましょ!ひな先輩が頼んだら全員でクーラーボックスの取り合いですよっ」

「えー、それはどうかなあ」


頼もしい後輩の亜美ちゃんと和気あいあいと話していると、下の方から「ひな」と名前が呼ばれた。