side 世那

「うぉいうぉいうぉい!!!」


テーブルに突っ伏していると、バタバタと騒がしい数人の足音と、やかましい声が近付いてきた。


Wの発音が強いこの声は、佐野だ。


隣に1人、正面に3人。俺を囲むように座った奴らは、それぞれがそれぞれに奇声を発しながら、俺の頭やら肩やら背中やらをバシバシと叩く。


「いてえよ」と身を捩らせて数多の手を振り解き、姿勢はそのままに顔だけを上げる。 


「……」

「「「ふぉー!!!」」」 


三宅、佐野、安達。横並びの三人衆から謎の歓声を正面に浴びて、耳を塞ぎたくなった。


「やっぱり帰ってなかったんだ」

「あったりまえ!帰るわけねーじゃんよ」

「ちゃんと世那のこと見守ってたんだよ」

「……どこで」

「あそこ」


安達は大きな窓を指差す。窓側のこの席が、薄暗い外からはよく見えるということが頭からすっかり抜け落ちていた。


「で、その項垂れてるのはどっちなの?」


俺の右隣に座る大河原波琉(はる)が頬杖をつきながら、未だテーブルに突っ伏す俺を見下ろした。首を90度、波流の方へと回す。


「どっちって、なにが」

「何か変なことでも言っちゃって、落胆してるのか。それともひなちゃんが可愛すぎて悶絶してるのか」

「……後者」