「こんな漢字」と向けられたメッセージアプリのプロフィール画面には、''柊世那''の文字。そしてアイコンには白くまん丸としたフォルムの犬の姿があった。


「犬、飼ってるんですか?」

「うん。2歳の男の子」

「私も飼ってるんです。同じビションフリーゼの女の子」


まさか同じ犬種の子を飼っているなんて驚きだった。
大の犬好きの私は、画面に映るモフモフにテンションが上がってしまう。   


緊張の糸が、少しだけ解ける。


「うちの子は6歳です」


机に置いてあったスマホを手に取り、待ち受け画面にしている我が家の愛犬の姿を柊くんへと向けた。


6の蝋燭が立てられたバースデーケーキの後ろで、カメラ目線でお座りをする可愛らしい姿に思わず笑みが零れる。


「ビションって、ほんと可愛いですよね」


目線を柊くんへと移すと、その瞳はスマホではなく私を映していた。


「……うん。可愛い」


表情筋を一切動かさず、ぽつり、柊くんは言葉を落とす。


その言葉は私に向けられているものではないことくらい十分分かっている。分かっているのに……、真っ直ぐな瞳に見つめられると変な勘違いを起こしてしまいそうになる。