「違う。罰ゲームなんかじゃない」
「……」
「あれはあいつらのおせっかいみたいなもんだから」
「おせっかい、」
「とにかく。絶対、罰ゲームではないよ」
強い眼差しと真剣な表情からは、到底嘘をついているようには思えなかった。
よかった……と胸を撫で下ろす。もやもやとしていた心は安堵で埋め尽くされる。のだけれど、人見知り+緊張MAXの私には「はい……」と愛想のない返事をすることしかできなかった。
「なにか買ってくる」と言って席を立った柊くんは数分後、トレイを手に戻ってきた。
そのトレイの上にはアップルパイとチョコシェイクが乗っている。
「(もしかして甘党なのかな……? そういえばハンバーガーを食べに来たって言ってたけど……。食べないのかな?)」
浮かんできた疑問は心の中に留めて、手持無沙汰にしなしなのポテトに手を伸ばした。
チョコシェイクを一口飲み終えた柊くんは、再び真っ直ぐな目を私へと向けた。
「改めて、さっきはいきなり話しかけてごめん」
「いや、全然です」
「白石東二年の柊世那です」
丁寧に自己紹介をしてくれた柊くんは小さく頭を下げる。
柊世那くん。下の名前は大会の時に登録選手名簿を見て知っていた。だけど彼の口から直接名前を聞けたことが嬉しくて、胸がうずうずとくすぐったい気持ちになる。