自分の右手を見て我に返ったのか、目を見開かせた柊くんは「ごめん」と再び呟くと、掴んでいた私の手を離した。


店内の照明のせいか、思春期の男子らしからぬ透明感のある肌はほんのり赤みを帯びているように見えた。


至近距離で見上げられている私はというと、照明の加減など関係なく、赤らんだ顔を晒してしまっている。自分でも分かるくらい頬に、熱が集中しているのを感じる。


先ほど掴まれていた左手も、まだ熱をもっている。


どこにも逃げ場がなく目を泳がせる私に、更に追い打ちをかけるように柊くんは口を開いた。


「嫌じゃなければ、ここにいてほしい」


落ち着いた平坦な声が、耳元に溶けた。


ドキドキはメーターを振り切ってしまった。完全なキャパオーバーを起こした私は、ぷしゅーと空気が抜けたようにその場に腰を落とした。



「罰ゲームじゃ、ないんですか?」

「え?」

「何かの罰ゲームで私に声をかけたのかと……」


心に引っ掛かっていたもやもやを思わず口にしてしまい、すぐに後悔をした。そんなことを聞いてどうするんだろう、と。はいそうです、罰ゲームです。なんて言われたら私はどうすれば……。


しかしそんな心配は秒で杞憂に終わる。