夏休み前の期末テスト週間に入り、地区大会を控える野球部以外は1週間前から部活停止になっている。


放課後はもちろん朝練も禁止。破った部活はペナルティとして、更にテスト明け1週間の部活停止が課されてしまう。


山口先生からは「赤点厳禁!」と部員全員にお達しが出ているので、私たちもこの2週間は体育館には近づかず、大人しく帰宅部に徹する。


古典、数II、化学の3教科を終えたヘビーな初日。 


明日の大一番である英語の勉強をするため、あっちゃんとふーこと一緒に学校近くのファストフード店へとやってきた。


テキストを開いて文法と単語を頭に叩き込むこと数時間。


揚げたてだったポテトは油をしっかりと吸ってしなしなになり、シュワシュワと炭酸が効いていたコーラは気の抜けた味になってしまった。


「あ〜〜〜もうだめ!集中力切れたっ!」


テキストの上に頭から倒れ込んだふーこは、テーブルの下で両手足をバタバタとさせる。


「もういや〜!canとかwillとかこんなの覚えてる場合じゃないのに〜!早く部活がしたいよ〜〜!」

「部停2週間はまじできついよね。あたしら勉強なんかしてる場合じゃないってのに」

「あれ?吹部って大会近いんだっけ?」

「いや、大会じゃないんだけどね。テスト明けすぐに野球部の地区予選があるじゃない、甲子園の」

「うんうん」

「私たちその応援で演奏するからさ。新しい曲も何曲かあるし、早く練習したいんだよね」


私の問いかけに答えてくれたあっちゃんは「ほら、特に風谷(かぜたに)は三春先輩が最後だから余計に気合いも入っててね」と隣のふーこの背中をぽんと叩いた。