「そういえばさー、白石東の部長、(ひいらぎ)じゃないらしいよ」


山口先生が職員室へと戻り、円を組んだまま雑談タイムが始まっていたところだった。


「まじ?柊じゃなかったら誰なんだよ」

「大河原だって。そんで副が佐野」

「へえ。あそこは柊一択だと思ってたわ」


突如会話の中心に上がった名前に、再び心拍が上がっていく。


「柊が断ったらしい。他の部員全員が柊を推したけど、そういうのは向いてないからやだって」

「やだ、って可愛いかよ」

「確かにあいつバスケのこと以外省エネっぽいしな」


……省エネ。


窓の外を気怠げに見つめる朝の彼の姿が、脳裏に鮮明に浮かんだ。どくどくと誤魔化しが効かないほど鼓動が早まっていく。


「なんか分かるかも。だけどかっけえよなー柊。馬鹿みてえにつえーし」

「中学の頃から有名だったじゃん。ほら、白石東が優勝掻っ攫ってるのも、柊が1年でスタメン入りしてからだろ?それまでは第一と互角だったのにさ」

「柊が1人いるだけで全然違うよね」

「あー柊がうちに入ってればなー」


くらくらと目眩がしそうなほど、会話の中心が彼一色になる。


チームの雰囲気が悪くなりそうになったり、士気が下がりそうになった時。崖下に落ちたメンバーを毎回引き摺り上げているのが光希だ。


「確かに柊は強いけど、俺らだって負けてねーんだからさ!打倒柊!打倒白石東!でがんばろーぜ」


省エネとは正反対。熱い心を持つ光希が鼓舞すれば再び全員のモチベーションは最高点まで上がっていく。


「ひなも、俺らのサポート引き続きよろしくな」

「うん。ちゃんと皆の力になれてるかは分からないけど、私もチームの一員として全力で頑張るから、よろしくお願いします」


私は三田第一のマネージャー。大好きなチームの皆を全力で応援してサポートするのが私の役目。


ライバル校のエースに恋をするなんて、
そんな御法度、許されない。