私はなんとか涙を堪えて、菅谷くんのお母さんに自分の病気を説明した。

「私も同じ病気なんです……」

 私の言葉に菅谷くんのお母さんはとても驚いた様子だった。頻発性哀愁症候群は稀な病気で、同じクラスにいるとは普通は考えない。
 菅谷くんのお母さんは「そうだったのね」と私と目を合わせて、言葉を返してくれる。
 きっと菅谷くんのことが心配なはずなのに……同じ病気の私に聞きたいことは沢山あるはずなのに、菅谷くんのお母さんはそれ以上何も聞かなかった。
 その優しさが菅谷くんにそっくりで、何故か私はまた泣きそうになってしまった。
 
 階段を上ってすぐに菅谷くんのお母さんが足を止めた。

「ここが柊真の部屋」

 菅谷くんのお母さんが部屋の扉をノックする。

「柊真。川崎さんが来てくれたわよ」

 それだけ言って、菅谷くんのお母さんは私に会釈(えしゃく)をして階段を降りていく。
 私はもう一度菅谷くんの部屋の扉をノックした。

「菅谷くん、入っても大丈夫?」
「うん。川崎さん、来てくれてありがとう」