「ごめんなさい。本当は柊真が出迎えられたら良かったのだけれど、調子が悪いみたいで代わりに私に出て欲しいって……」
「っ……!菅谷くん、そんなに調子が悪いんですか……!?」

 ついそう聞いてしまった私に、菅谷くんのお母さんは悲しそうに微笑んだ。

「私たち家族とは話してくれるのだけれど、他の人が怖いみたい。丁度10時くらいに別の人がチャイムを鳴らすことなんて滅多にないのに、別の人が出たら怖いって」

 いつもクラスの中心にいる菅谷くんからは考えられないほど弱っているのかもしれない。

「だから、友達が来るって聞いて私も心配でつい聞いたの。『大丈夫なの?』って。そしたら、『俺の病気のこと知ってる人だから』って……川崎さん、本当にありがとう」

 悲しそうな笑顔のまま、菅谷くんのお母さんは私に(すが)るような言い方でお礼を言った。
 菅谷くんは自分がそんな状況になっても「俺の病気を知っている人だから」と自分のお母さんに伝えた。「同じ病気の人だから」とは言わずに。
 私の病気を明かさないでくれた。菅谷くんがどれだけ優しい人か分かっていたはずなのに、また泣きそうになってしまう。