その言葉を問いかけても、菅谷くんは絶対に「大丈夫」としか返さないのに。それでも、体調が悪そうな人にかける言葉なんて急に言われても「大丈夫?」しかなくて。
 菅谷くんはいつも通り無理やり笑顔を作って答えるのだ。

「全然大丈夫だよ。ちょっと疲れちゃって……川崎さんはもうお風呂終わったの?こんなところまで来て何かあった?」

 菅谷くんの質問に答えようとして、菅谷くんの質問が話題を変えるためだと気づいて胸が苦しくなった。どうしてこの人はこんなにも大丈夫なフリが上手なの?
 それでも実際、菅谷くんに頼られてもきっと私では力になれない。その事実が一番悲しかった。
 私はそっと菅谷くんの隣にしゃがんで座る。

「川崎さん……?」

 自分は隠したいことを隠して、菅谷くんには弱みを見せて貰おうなんてあまりにも都合が良すぎる。きっと私が出来ることは素直に弱みを見せることだけだ。でも、その勇気すら持てなくて。
 それでも、隣を見れば今にも倒れそうな真っ青な顔で無理やり笑顔を作っている菅谷くんがいる。


 「助けたい」と思わない方が無理だった。