「大丈夫?菅谷から体調をちょっと崩したみたいって聞いたけど……」
「うん、ごめんね。カレー作り全部任せちゃって」
「それは全然大丈夫!美味しく出来たけど、食べれそう?」
「うん、少し貰ってもいい?」
「もちろん」

 草野くんと美坂さんがカレーをお皿に盛り付けるために、鍋のところに早足で駆けていく。私は同じく立ち上がろうとした菅谷くんを呼び止めた。

「菅谷くん、さっきは本当にありがとう」
「ん?全然」

 菅谷くんはそれ以上何も聞かず、言えないことを聞かれることがどれだけ苦しいかを知っているようだった。菅谷くんは代わりにカレーの話を始めた。

「このカレーさ、草野がルーの量を間違えそうになって美坂さんが慌てて止めててさ。それに……」

 私を気遣って話を変えてくれる菅谷くんはあまりにスラスラと言葉が出てきていて、上手く話を変えることに慣れているようで、それがどこか苦しかった。

「おーい、川崎さん!カレー持ってきたよ。俺の自信作!」
「お前はほぼ足引っ張っただけだろ」
「菅谷、ひどいこと言うな!」

 私はテーブルの近くの椅子に座ると、そっと一口カレーを口に運ぶ。