「先生呼んでくる?それとも保健室の先生のところに行った方がいい?」
「なんで……?」

 「なんで分かったの?」聞きたいのに言葉は最後まで出てこない。それでも、菅谷くんは私の問いの意味が分かったようだった。


「川崎さんは楽しい時に笑う人だから。愛想笑いをする人じゃなくて、本当に楽しい時だけ笑ってくれる人」


 菅谷くんの言葉の意味がすぐに理解出来ないまま、菅谷くんが辺りを見回し始める。

「とりあえず、座ろ。あそこにベンチがあるから座ってて。俺、保健室の先生呼んでくる」

 私は言われるままにベンチに座って、額の汗をハンカチで拭った。菅谷くんの先ほどの言葉がもう一度頭をよぎる。
 私は周りの人と関わらないために出来るだけ笑わないようにしていた。それでも、どうしても堪えられず笑ってしまう時はあって。
 それを菅谷くんは「愛想笑いをする人じゃなくて、本当に楽しい時だけ笑ってくれる人」と表現した。症状が出て弱っているからだろうか。喉の辺りがキュゥっと痛んで、目に涙が滲んだのが分かった。

「川崎さん、保健の先生呼んできたよ……って、大丈夫!?」