「これと似たようが感じの貝殻がいい!そしたら、川崎さんとお揃いで今日の思い出になるし!」

 美坂さんの言葉に私は喉がキュゥっとして、目が少しだけ潤んだのが分かった。美坂さんはどれだけ優しい人なんだろう。

「私ねー、実は今日結構楽しみだったんだよね。川崎さんとちゃんと話せる機会だから」
「……?」
「私ね、入学式の日、ちょうど川崎さんの斜め後ろの席だったの。そしたら入学式の途中から川崎さんが苦しそうにみえて、大丈夫かなって見てたの。ずっとずっと苦しそうに下を向いてて、声をかけるか悩むほどだったんだけど……」

 美坂さんはしゃがんで貝殻を探していた手を止めて、私の方に視線を向ける。

「それでも、誰かが壇上に上がって礼をする時だけなんとか顔をあげて、一緒に礼をしてた。ちゃんと背筋を伸ばして。入学式が終わってすぐに体調を聞こうと思って声をかけようとしたら、教室にもういなくて……でも、なんか印象に残ったんだよね」

 その時、美坂さんが「あった!」と砂浜から小さな貝殻を手に取って、私に持って来てくれる。そして、私の手の上にその貝殻を乗せた。

「はい!どうぞ」