出席確認の紙に名前を書いた後、簡単な質問にチェックをつけていく。「水分を持ってきたか」とかそんな簡単な質問。
 それでも、最後の質問は私にとって難しくて。

「体調に異常がなく、健康である」

 分かっている。この質問は風邪などをひいていないか、いつもと違う不調はないかを聞くもの。それでもその質問にチェックをつけている時、どこか心がギュゥっと痛くなって泣きそうになった。
 その時、誰かが後ろから私の肩をトントンと叩いた。

「おはよう、川崎さん」
「菅谷くん……おはよう」

 菅谷くんは私に挨拶を済ますと、すぐに川北先生から出席確認の紙を受け取って書いている。菅谷くんはサラサラと紙を書き終えると、先生に渡して友達のところへ走っていく。
 その後、すぐに集合がかかって皆んなバスに乗り込んだ。席に余裕のあるバスにわざと最後の方に乗り込んで、私は隣がいない席に座る。走り出したバスで窓の外を見ながら、先ほどの光景を思い出した。
 
 当たり前のように今日も笑顔で人気者の菅谷くんは、体調確認の紙をスラスラと書いて提出した。