私は自分で自分を抱きしめるようにギュゥっと腕に力を込めた。

 バッグからぬいぐるみも持ってくれば良かっただろうか。

そんなことを考えていると、廊下の隣にある教室から声が聞こえた。

「……ぶ……せい……」

 途切れ途切れでよく声が聞き取れないまま振り返ると、教室でうずくまっている男子生徒がいる。

とても体調が良いようには見えず、放っておけるような状態ではなさそうだった。

私は空き教室の扉をそっと開けた。

「あの……大丈夫ですか……?」

 自分もとても体調が良いとは言えないが、目の前の人の方が辛そうである。その男子生徒は私の声を聞いて顔を上げる。

 初めて見た男子生徒の顔色は真っ青だった。

「っ!大丈夫ですか……!?」

 私が慌てて駆け寄ると、男子生徒は何故か無理やり笑顔を作った。

「全然大丈夫。君も新入生?」

 君もということはこの人も新入生なのだろうか。でも、今はそんなことより……

「あの、本当に大丈夫ですか?先生を呼んできた方が良かったら……」

「大丈夫だから!」