菅谷くんを一人にして置けないとかそんな優しい気持ちじゃなくて、きっとこれは少しの「不安」だ。同じ苦しみを持っているかもしれない菅谷くんが頑張っているのに、私だけ逃げることへの不安。

「本当、私ってどこまでも自分本位だな……」
「奈々花?」
「ごめんね、お母さん」

 私はお母さんに謝ってから、自分の部屋に戻る。ベッドには大きなくまのぬいぐるみが置かれている。私はそっとぬいぐるみと手を繋いだ。
 当たり前だけれど、ぬいぐるみは手を握り返してはくれなくて。
 私はポツポツと呟くようにぬいぐるみに話しかけた。

「知ってる?人間って寂しくても死なないんだよ。こんなに辛いのに」

 当たり前だけれど返事もなくて。

「このまま死ねたらいいのに」

 最低な言葉を吐いても、誰にも聞かれなければ怒られない。最低な自分の言葉が耳にこだまして聞こえた気がした。


翌日の五限目はオリエンテーションの班決めだった。その前の昼休みに私は廊下で川北先生に呼び止められた。

「川崎、オリエンテーションは参加出来そうか?」
「一応、参加したいと思っています」