下絵は何度も書き直しただけあって満足していた。これから色をつけていくのが楽しみなくらいで。それでも、まだコンテストに応募する勇気は湧かなかった。

 それからの毎日は半袖でも暑いくらいで、冷房の入っている部室から一歩外に出ればブワッと蒸し暑い空気が襲ってくる感じがした。
 サッカー部の絵を描くと決めて3週間、私の絵の進捗は半分に少しいかない位だった。隣の美坂さんが窓の外を見ながら、「今日、暑いから運動部大変そう」と呟いた。
 部室は運動場に面していないので、美坂さんの言葉に私はつい窓の外を見てしまう。窓の外では校舎の外周を野球部が走っていた。しかし、すぐに美術部の窓から見える場所からはすぎて行ってしまう。美坂さんは窓の外に向けていた視線を私に向けた。

「草野くんと菅谷くんも今日、暑いから大変だろうね」
「うん、絶対暑い」

 美坂さんは「冷房の効いた部屋で絵を描ける私たちは感謝しないと……!」と言って、いたずらっ子のようにクスッと笑った。