珍しく菅谷くんがメッセージの最後に「笑」とつけていて、前より距離が縮まった感じがした。それを嬉しく思うことに自分が成長した気がした。

【周りの人にこれ以上迷惑をかけないこと】

 そう思って、周りと距離をとっていた。でもあの日……サッカー部の練習試合が雨で延期になった日、菅谷くんはこう言った。

「川崎さんも一緒だよ。迷惑じゃない。川崎さんが俺を迷惑じゃないと思うのと一緒」

 その言葉を思い出すたびに周りの人と仲良くすることを諦めなくても良いんだと思えた。一人でもそう言ってくれる人がいることに救われた。
 本当は気づいていた。菅谷くんや美坂さん、草野くんの顔を見れば分かっていた。

 みんなが私を迷惑になんか思っていないことを。

 それでも認めることが出来なくて、「いつか」相手を傷つけることを恐れていた。そう思って書いた目標はきっと前に進むための目標じゃなくて、自分を守るための目標だった。

 私はいつものメモ帳をスクールバッグから取り出す。ノートの1ページ目に書かれた三つの目標。

・「頻発性哀愁症候群」を治すこと
・周りの人にこれ以上迷惑をかけないこと