「川崎さん、絵うま!」

 私の完成した絵を美坂さんが嬉しそうに見ている。

「私、この雰囲気好きだな」

 美坂さんが純粋に喜んでそう言ってくれる。私が「ありがと」と返すと、「次は何を描く?」と聞かれた。

「……もうちょっと考えたくて」
「題材はしっかり考えて決めたいよね。ゆっくり考えよ!」
「うん、ありがと。ちょっと校内見てこようかな。題材探ししたいし」

 私はそのまま部室を出ると、放課後の静かな廊下を歩いていく。いつもの教室、理科室、図書室、順番に場所を見ていくだけで楽しかった。木下先生が言うには、風景も校内に限らずに好きな写真を持ってきても良いらしい。
 私は校舎の外から見える景色も確認したくて、正面玄関で靴を履いて外に出た。校舎の周りを歩いていくと、運動部が運動場で練習している。私はついサッカー部を探してしまう。
 サッカー部はランニング中で、草野くんはすぐに見つけることは出来たが菅谷くんが見当たらない。

「川崎さん?」

 急に後ろから声をかけられて、私はビクッと身体を震わせて振り返る。

「菅谷くん……!」
「川崎さん、どうしてこんなところにいるの?」