「川崎さん、私、ハーフタイムの間にお手洗い済ませてくるね」

 美坂さんがお手洗いに行って一人になると、一気に現実に戻った感じがした。ハーフタイム中でさっきまで耳に響いていた周りの歓声も聞こえない。それでも、周りの観客たちの話し声がザワザワと聞こえていた。
 菅谷くんたちはベンチで水分補給をしながら、コーチの話を聞いている。今回は一年生メインの練習試合と言っていたけれど、素人から見ると全然レベルが高いように見えた。
 ハーフタイムが終わる前には美坂さんも戻ってきて、後半が始まった。
 点を決めるチャンスは何度か来るのだが、点を決めきることは難しく0対0のまま試合は進んでいく。後半が始まって20分ほど経った頃、菅谷くんたちのチームにもう一度点を決めるチャンスが来る。
 周りの歓声が大きくなった瞬間……

「あ!入った!」

 私と美坂さんは顔を見合わせてて「やった!」とハイタッチをしてしまう。残り30分程、このまま終われば菅谷くんと草野くんのチームの勝ち。しかし、段々と相手チームに流れがきているのか相手チームに点が入るチャンスが多くなっていく。