菅谷くんは本心が溢れ始めた私の言葉を静かに聞いていた。

「両親にもいっぱい迷惑をかけてから、ふと思ったの。『ああ、私があげられている幸せより迷惑の方が大きい』って。気づいた時、泣くほど苦しかった……でも、事実なんだよ」

 涙をボロボロの顔から、誤魔化しか嘲笑か分からないような笑いが溢れた。

「悲しいけど、事実なの。病気も迷惑も現実で、どうしようもないだけ……」

 その時、菅谷くんが急に立ち上がって、私の前でしゃがんだ。そして、そのまま両手で私の手を包み込むように握る。

「川崎さん、大丈夫だよ。寂しくない」

 いつもの自分で自分に言い聞かせている言葉なのに、菅谷くんの口調が優しくてさらに涙が溢れたのが分かった。

「ねぇ、川崎さん。俺、川崎さんと出会って幸せより迷惑が大きいと思ったことないよ。ていうか、考えたことがない」
「……?」
「人ってそんなに損得勘定で動けるものじゃないんだよ。川崎さんといて楽しいから一緒にいるだけ。きっと川崎さんの両親も一緒だと思う。ただ川崎さんが好きなだけで、川崎さんの力になりたいって無意識に思ってる」