「繋ごう。『寂しくない。大丈夫』って前に川崎さんが言ってくれたみたいに俺にも言わせて」

 甘えたくない、という感情が顔を出した。甘えるということは周りの人に迷惑をかけるのと一緒な気がした。

「本当に大丈夫!もう(おさ)まったから」

 下手の嘘を重ねても意味はないのに、言葉は止まらない。

「最近、結構病状にも慣れてきてるから」

 菅谷くんは嘘だと気づいているのに「そっか。分かった」と言ってくれた。それなのにさらにグッと胸が苦しくなって、症状が酷くなっていく。笑い方がぎこちなくなっていく。
 こんなに寂しいのに、泣きたいのに、周りに迷惑をかけたくなさすぎて頼り方すら分からない。

「川崎さん、俺、症状出てきたかも」
「え……?」
「手、繋いでくれない?」

 その菅谷くんの嘘が……優しさが、嬉しいのに悔しくて。結局、迷惑をかけてしまう自分が嫌で嫌で涙が溢れた。

「本当に大丈夫だから!迷惑かけたくないの……」

 溢れ出した「迷惑をかけたくない」だけは本心だった。

「本当に迷惑をかけたくないだけなの。周りの人まで苦しめてしまうのが怖い」