そう呟いてしまった自分の声を聞いて、ギュッと胸が痛くなった。ぬいぐるみを枕元に戻すと、一階からお母さんが私を呼ぶ声が聞こえた。

「奈々花、そろそろ出かけるよー」
「はーい、今降りるー!」

 私は慌ててバッグを肩にかけて、部屋を出た。一階に降りるともうお母さんとお父さんは出かける準備を終えていた。お父さんが運転してくれるのでお母さんが助手席に乗り、私は後部座席に座った。
 お父さんが車を出す前にサッカーの練習試合が行われる場所をスマホで調べている。

「奈々花、この場所で合ってるか?」
「うん、合ってる。ありがと」

 お父さんはその場所を知っていたのかナビを入れずにエンジンをかけた。車に乗っている間、両親は私を送った後二人で出かける予定について話している。私はその話を聞きながら、ぼーっと窓の外の景色を見ていた。見知った景色から段々とサッカー場に近づくにつれて知らない景色に変わっていく。

「あら、ちょっと曇ってきたわね」

 お母さんの言葉に私は窓から空を見上げた。確かに薄暗い雲が空にかかり始めている。

「どうしよ、雨降るかな」