一階に降りていくと、朝ごはんの美味しそうな香りが広がっている。

「奈々花、おはよう。朝ごはん出来てるわよ。パンはトーストする?」
「うん、お願い」

 お母さんには昨日の夜には今日出かけることを伝えておいた。

「そういえば、今日出かける用事ってサッカーの試合を見に行くんでしょ?ここから近いの?」
「うーん、電車で10分くらい」
「丁度お父さんと出かける予定があるんだけど、ついでに送っていく?」
「いいの?じゃあ、お願い。10時45分には着きたいかも」
「じゃあ、10時半前には出ましょ。帰りはどうする?」
「帰りは電車で帰るよ」
「分かったわ」

 お母さんはそう言って、私の前の机に朝食を並べてくれる。時間に余裕もあったので、私はゆっくりと朝食を食べ終える。部屋に戻って着替えを済ませて、鏡の前に立つ。サッカー観戦なのでいつもよりカジュアルで涼しそうな服を選んだ。
 最後にベッドの枕元に置かれているいつものぬいぐるみを手に取って抱きしめた。心の中で「寂しくないよ」と唱えて、今日一日症状が出ませんようにと願ってしまう。

「ぬいぐるみを抱きしめるなんて子供みたい……」