「でも、なんか勇気出たわ」

 菅谷くんが自分から私を頼ってくれることは本当に少なくて。菅谷くんが勇気を出すために私に電話してくれたことが嬉しかった。

「ごめん、こんなことで電話かけて。ありがと」
「ううん、全然」

 菅谷くんと電話が切れた後も、しばらくスマホの真っ暗な画面を見ていた。

 その時、急に症状が顔を出した。


 寂しい。


 私は慌てて、枕元に置かれているぬいぐるみと手を繋いだ。さっきまで菅谷くんと話していたからだろうか。急に一人になって寂しくなったのかもしれない。
 そう思うのに、いつもと違ってぬいぐるみと手を繋いでも中々症状が(おさ)らない。

 なんで。なんで。早く治って。

 先ほどの菅谷くんの言葉が頭をよぎったのが分かった。

「実は、サッカー部に入ろうか悩んでて……」

「やっぱり諦めたくないなって」

 涙が目に溜まって、溢れていく。


「置いていかないで」


 気づいたら、そう呟いていた。どれだけ私は最低なんだろう。自分だけ前に進めないのが「寂しい」なんて。置いていかれるのが「寂しい」なんて最低すぎる。声を堪えても嗚咽がこぼれてしまう。