「川崎さんも良かったら油絵を見に行かない?」
「じゃあ、行こうかな」

 私たちは草野くんと菅谷くんに油絵のブースに行くことを伝えて、トリックアート展を先に出た。油絵のブースは子供連れも少なく、誰も小声でも話していなくて静かだった。美坂さんと私はそれぞれのペースでゆっくりと油絵を見ていく。
 小さい頃は美術館が好きだった。美術部に行けなくなった後は自然に美術館に行くこともなくなったけれど、やっぱりこの雰囲気が落ち着いてしまう。
 油絵を見終わってブースに出ると、美坂さんはもう見終わっていた。

「ごめん!待たせちゃった?」
「ううん、全然。私も今、見終わったところ」

 私たちはそのまま菅谷くん達がトリックアート展から出てくるまで、エントランス付近の休憩所で休むことにした。

「川崎さんって油絵が好きなの?」
「うん。割と美術関係はなんでも好き」
「そういえば中学は美術部だったってオリエンテーションの時に言ってたね」

 中学の頃の部活のことを思い出すと、美坂さんの言葉に上手く返事をすることが出来なかった。

「高校は美術部入らないの?」
「あ、えっと……帰宅部にしようかなって」