バスに乗って30分ほどで目的の美術館に着いた。

「うわ、俺、美術館とか小学生ぶりなんだけど」
「草野でも美術館行ったことあるんだな」
「どういう意味!?」
「いや、なんかイメージなかった」
「菅谷、お前もっと俺に遠慮しろ!」

 草野くんと菅谷くんは楽しそうに話していたが、美術館に入るとすぐに静かになってトリックアート展の開かれている場所まで歩いていく。トリックアート展なこともあり、美術館では珍しく「写真撮影OK」と書かれている場所も多かった。
 美術館の中でもトリックアート展は家族連れも多く、少しなら話している人も多かった。

「菅谷、この場所で写真撮ろーぜ。そこ立って」

 草野くんが菅谷くんをトリックアートの上に立たせて、写真を撮っている。私と美坂さんも何枚か写真を撮っていると、美坂さんが小声で私に話しかけた。

「川崎さん、私、別のブースでやってる油絵のコーナーも見たくて……ちょっと行ってくるね」

 美坂さんが高校で美術部に入っていることもあって、本当に絵が好きなようだった。美坂さんがトリックアート展を出ようとして、私の方を振り返った。