焦る気持ちはあるのに、部屋の扉を開けることすら出来ない。その時、コンコンと部屋の扉がノックされてお母さんの声が聞こえる。

「奈々花、一緒にショッピングモール行かない?そろそろ涼しめの服を買いたくて」
「えっと、今日は……」
「何か用事あるの?」

 お母さんがそのまま「開けるわよ」と言って、扉を開ける。

「あら、もう着替えてるの?」

 お母さんの言葉に私はキュッと胸が痛くなった。いつもならお昼頃までパジャマでのんびりしている時もある。

「どこかお出かけ?」
「……ちょっとオリエンテーションの時の班で遊ばないかって……」

 私の言葉を聞いた瞬間、お母さんの顔をパッと明るくなった。

「そうなの……!それはいいわね。楽しんでいらっしゃい。もう出かけるの?」
「一応10時に約束……」
「じゃあ、そろそろ出ないとじゃない!ほら、早く一階に降りましょ」
 お母さんにつられるように私は階段を降りていく。開けられなかった自分の部屋の扉をあっという間に飛び越えて。
 バッグを持って、いつの間にか靴を履いて玄関に立っている。

「ゆっくり楽しんでおいで」