それからはずっとぬいぐるみを抱きしめて耐えた。夜眠れない時もぬいぐるみを抱きしめ続けた。両親に我儘を言って仕事を休んでもらうことも辞めたのに、「寂しさ」は全く改善しないままだった。耐えられているようで耐えられていなくて、お母さんと一緒に眠る日もあれば、両親の仕事の休憩時間に電話をかける時もあった。

 そして、この「ただ寂しくて堪らない」病への向き合い方が分からぬまま、私は高校生になった。

 病気を発症して二年。私はなんとか中学校を卒業し、高校に入学できることになった。今も大きなぬいぐるみを大事に持って、ぬいぐるみの手を握って眠っている。日中もぬいぐるみを握りしめていることがほとんどだった。
 人によっては、友達や家族に執着をしてストーカー化する人もいるらしい。そして、明確な治療方法がない今、その病を抱えた人たちはただただ「寂しさ」を自分なりに埋めるために何か方法を考え続けている。

 「自分」と「周りの人」を壊さないために。

 そして、「寂しさ」との向き合い方を知るために。

 私の高校生活の目標は三つ。

・「頻発性哀愁症候群」を治すこと

・周りの人にこれ以上絶対に迷惑をかけないこと

・高校を無事卒業すること

 明日から、私の高校生活が始まる。きっと私が想像も出来ないような日々が始まる予感がした。