「……あ…えっと、佐倉井さん…ごめんね?」


申し訳なさそうに私に謝罪する眼鏡を無視して、私は自分のスマホを取り出しカメラ機能を起動させる。



「はい、チーズっ!!」


反射的に私の方に顔を向けた芹澤くんと眼鏡くん。その瞬間…私がスマホのシャッターボタンを押したことにより”カシャッ”という爽快な音が部室内に響いた。



「あ…えっと、今のは一体、、」


キョトン顔の眼鏡くんと、不機嫌そうな芹澤くんにたった今撮れたばかりの写真を披露してみせる。


「新しい写真部の記念すべき最初の一枚!スマートフォンのカメラだって写真を撮れるんだから、立派なカメラのうちのひとつでしょ?私が写真部に入部して一番最初に撮った作品が…これ。」



それは、私一人だけがピースにキメ顔で映っているだけの…盗撮のような写真に過ぎない。

ボーッと仁王立ちの眼鏡くんと、怒っているように見える不機嫌そうな芹澤くん。



なんとも不穏な空気が漂う一枚になったが…これはこれで味があるというものだ。


そんな不純な動機で入部してから半年─…




***



「由吏《ゆうり》、待ってよ…歩くの速いっ」

「遅ぇな…だから、一人で行くって言ったのに」



絶対に分かり合えないだろうと思っていた、芹澤由吏と付き合うことになるなんて─…誰が予想出来ただろうか?