ある日の放課後─…


部室に入ろうとした俺は、なにやら作業をしている佐倉井 胡桃の姿を発見し…声を掛けることなくその様子を黙って見ていた。



優しい眼差しを向けながら、手に持っている額縁を丁寧に拭いている。角度が変わり、彼女が手にしている額縁の中に自分の撮った写真が収められているのを見て、、



思わず部室の壁に視線を向ける。


そこで初めて【最優秀賞】と書かれたプレートの下にあったはずの自分の作品が壁から消えていたことに気付いた。それはつまり…いま目の前で彼女が手入れしている物がソレだということを意味していて…その事実にとても驚いた。



いつからそんなことをしていたのかは知らないが、彼女は初対面の時から俺の撮ったあの写真に興味を持ってくれていた。



入部してからも冷たい態度を取り続けているにも関わらず、俺以上に…俺の作品を大切にしてくれている彼女から、目が離せなくなった。



その日から─…


佐倉井 胡桃という人間に興味を持った俺は、気が付けば彼女のことを目で追うようになり…


俺では無い他の男子生徒に微笑んでいる彼女を見た時─…胸が焼けるようにジリジリと傷み、謎の焦燥感に駆られた。


そうなって初めて…自分の恋心に気が付いた。