被写体にカメラを向けてファインダーを覗き込む由吏の姿は…とてもかっこいい。


目立つ存在では無い為、あまり知られていないが由吏があの長い前髪をかきあげると…その下に隠されている整ったご尊顔が姿を現す。


カメラを覗き込む瞬間、前髪をかきあげる…その僅かな瞬間だけ見られる由吏の素顔。



彼の熱い視線がレンズを通り抜け、その先にある被写体に向けられているのを見て─…


──…由吏の被写体に、なりたい



と思うことは良くあった。



あんな風に真っ直ぐ、私のことを見て欲しい。夢中でシャッターを切るほどに…片時も目を離さず視界の中に私だけを入れて、由吏の見ている世界に私を連れて行って欲しい─…



『ねぇ、由吏…私の写真撮って!お願いっ』


『断る…頼まれて撮ったものは自然体じゃないから。撮ったところでつまらない写真が出来上がるだけだ』


『えぇ〜…いいじゃん一枚くらい』


『撮らない。そんなに自分の写真が欲しいなら…早乙女にでも頼めば?』



写真を撮って欲しいとお願いした私の頼みを秒速で断った由吏。自分が”撮りたい”と思って撮るものと頼まれて撮るものは違うと…彼はそう言っていた。



私のことを撮りたいとは思ってくれないのか、とショックを受けたが…彼らしい言い分だと思いその時は納得したものの、、