「あ、ありがとうございます!……また来ます!」

ドキドキしたのは初めて自分にお花を買えたこともあるけれど、その上まるでアイドルか王子様かと思うような店員さんに優しく接客してもらえたことも大きいように思う。
お店を出ると夜風が涼しく感じるくらいには、店内でいかに自分が緊張していたのかがわかる気がした。

帰ってからはすぐに買ったばかりの一輪挿しにピンク色のガーベラを生けた。
部屋の照明に加わるみたいに、室内にもうひとつ明かりが灯ったような不思議な気分だった。
飾ったテーブルの上で頬杖をつき「お花はかわいいし、店員さんはかっこいいし……!」と零し、店内の花々と接客を思い出して思わず勢いよくテーブルに突っ伏す。

「あれは……通ってしまう……」

たった数分でお店と店員さんの大ファンみたいになってしまったようだ
そしてきっとあのお店が大好きな女性客は他にも多いことくらいは察しがつく。

お花が一輪あるだけで気分が上がると言われた言葉通り、お花はきれいでかわいくて出来れば今後も飾りたい。
でも店員さんのファンにもなってしまった私の心はどこか複雑で、こんな気持ちも抱き合わせたままお花を買いに通ってもいいものかと迷いもする。