山木さんがドラマを見るより面白いと浮かれながら仕事をしてくれたおかげで、突然の千尋くんの来店に放心し私が使い物にならなくても仕事は問題なく終わった。
帰りにあのお花屋さんに寄ったら何が起こるのだろう?

ハッピーエンドとバッドエンドが脳内でせめぎ合う。

いや、何も起こらないかもしれない。
そういえば買ってくれた豆大福は三つ。
千尋くんと千早くんと三人で豆大福を食べるノーマルエンドかもしれない。

着替えを終えてロッカーの扉を閉じるにもそのままロッカーに閉じ込められてしまいたい。
つい、そんな現実逃避が頭をよぎる。

「会いたくないの?」
「会いたいです……」
「それでいいじゃない!」

山木さんは言葉少なにそう言って、私の背中をポンと叩いた。

千尋くんに会えるのは嬉しい。
千尋くんだってそう思ってくれてるのかもしれない。