「あの!バイト先の余り物なんですけど、差し入れで!豆大福なんですけど良かったらどうぞ!」

お花屋さんに寄る前に散々心の中で練習したセリフを口にすると、迎えてくれた千早くんはとびきりの笑顔でありがとうと言って喜んでくれた。
店内は静かで千早くん以外、お客様も、千尋くんもいなかった。

「あー花純ちゃん、ここの和菓子屋さんで働いてるんだ?」
「あ、はい!」
「嬉しい。うちの奥さんが好きなんだ。でも、これは千尋といただきます」
「……千尋くんはお休みですか?」
「うん。最近、働きたがるけどね」
「お仕事好きなんですね」
「はは!……いや、どうかな?最近まじめになったっていうか」

千早くんはおかしそうにしばらく笑ったあと、「お花好き?」と私に問いかけた。

「はい……好きになったばかりですけど」
「うちの店、選んでくれてありがとう」
「あ……いえ、ずっと素敵だなって思ってて。入ってみたら思ってたよりももっと素敵で」
「……」
「あれ?変なこと言いましたか!?」
「いや、いい子だなぁと思って」

ためてからしみじみと千早さんが褒めたりするから、私は照れくさくて仕方なかった。