「やだ!素敵!」

翌日、仕事終わりに山木さんに話を聞いてもらうと城田さんと同じ反応が返ってきた。

「千尋くんに恋しちゃいそうなんですけど」
「え?してるでしょう?」

何言ってるの?みたいなトーンで言われて自覚するしかなかった。
千早くんがお客様と結ばれた話を聞いてしまったから、期待してしまう自分が怖かった。
千尋くんも千早くんも優しくて接客上手だから勘違いなら早く気づきたい。

変に気まずくなってお店に行けなくなるのも寂しい。
わがままな感情にため息をこぼす私に、山木さんは「はい、これ」とうちのお店の紙袋を差し出した。

「お店の余り物だけど、豆大福がふたつ入ってるから。『差し入れです』って、帰りにお花屋さん寄ってお話でもしてきたら?」

そう言ってにこりと笑う山木さんは女神なのかもしれない。

「ありがとうございますぅ……」

泣きそうになりながら会いに行く口実を作ってくれた山木さんに感謝すると、「お土産話期待してるから!」と抜け目はない。