「やだ!素敵!」

城田さんはにこにこと満足そうに「また今度その話聞かせてね」と花束を抱えてお店を出て行く。
あっという間に山盛りの個人情報が流し込まれたような私は、もはや城田さんに置き去りにされた気がしてどういう気持ちで彼らに接していいかわからない。

「いらない情報聞かせちゃってごめんね」

と察したように苦笑しながら、嵐が去ったような店内で千早くんが小声で私に謝った。

「いえ、こちらこそ……」

聞いてもいないことをいろいろと聞いてしまって申し訳なく思いそう返すと、千早くんは優しい微笑みを浮かべる。

「僕が千早で、隣が弟の千尋です。今後ともご贔屓に」
「……か、花純と言います」

妙な展開で自己紹介すると、三人でふっと同時に笑いがこぼれた。
会計を済ませてお花を受け取ろうとすると、「店先まで送ります」と千尋くんが言ってドアを開けてくれた。

「また来てください」

そう言って笑顔でお花を渡されて「また来ます」と言う言葉以外返せない。
でも心のどこかで、『また会いに来てもいいですか?』そう聞きたくて仕方ない私がいる。