だけど彼女はこの街に戻ってきた。もしかすると、神様が俺の後悔を聞き入れてチャンスをくれたのかもしれない。

 次は失敗するなって……


「誠意を込めて謝ったら許してくれるかな」

 結菜が転校する日、渡したかったプレゼントを見つめる。すると素直な気持ちが言葉となって漏れ出た。
 プレゼントは箱がひしゃげた当時のまま、捨てることもできず今も自室に置いている。

 歪にひしゃげた箱は、まるで自分と結菜の関係のようだと思った。


 あの日はいつもの非礼を詫びて、仲直りするつもりだった。そして「またここに帰ってこいよ」と言いたかった。

 それなのに、なぜ出来なかったんだろう。なんで謝れなかったんだろう。何度後悔したかしれない。


 本当は学校でも外でも、なにげない会話を交わしたかった。初めての時のような笑顔を向けてほしかった。仲良くしたかった。

 だけど、そんな簡単に許されるとも思っていない。
 結菜は俺のせいで、俺の同級生たちにも揶揄われるようになった。彼女が受けた心の傷は自分などには量りしれないだろう。

 それでもいつかは許してほしい。
 何度だって謝るから。好きになってくれとは言わない。でもどうか初めての時のように笑いかけて。

 君と笑顔で挨拶を交わせるようになりたい。そのためにならどんなことだってするから。

「結菜」

 祈るように彼女の名前を絞り出す。
 目を瞑ると、あの夏祭りの日――夜空に咲く花火よりも美しい結菜の笑顔が鮮明に浮かんだ。