結菜とは同じ学校だったが学年が違うかったせいか、俺が彼女を知ったのは近所の神社で行われる夏祭りのことだったと記憶している。

 さほど大きな神社ではないので、参加しているのは地域の人たちだけなのだが、普段あまり交流できない公立小学校の子たちとも遊べるので、俺はその日がすごく好きだった。


 そう。あれは八年前の夏祭り――俺が小四で結菜が小二のこと。友達と盆踊りを楽しんでいると、ふと彼女が目に入った。
 周りに全然ついていけていない固い動き。余裕がない表情。なんだかとても可愛らしく見えて、教えてやりたいと思ったのを今でもよく覚えている。

 でも結菜は母親と来ていたから、どう声をかけたらいいか分からなかった。結果、迷っているうちに花火が始まってしまい、俺は皆が空を見上げている隙に結菜の隣に移動した。

 そして花火ではなく彼女をジッと見つめる。

 夜空に咲く華やかな花火に照らされて、結菜の体が輝き、黒髪が一層つややかに見えた。つい見惚れていると、彼女が俺のほうを向いた。見ていることに気づいたのだろう。


「よそ見をしていたら損だよ。ほら見て、めちゃくちゃ綺麗!!」

 そう言った結菜は屈託のない笑顔で俺の手を掴み、花火が上がっている空を指差す。
 不意に繋がれた手がドキリと心臓を跳ねさせ、体温を急上昇させた。

 その時、俺は結菜に一目惚れをしたのだと思う。