「美味しいー」
「良かった。お代わりもあるから」

 大好きな人と一緒に居られるだけで幸せなのに、食べている姿を見て満足そうな表情をされると見られている私まで嬉しい。危険と隣り合わせの仕事から解放された今の表情は、私にしか見ることのできない特権だと思った。

 いつまでも平穏な日々が続いて欲しい――

 ところが、私の周りで不穏な視線を感じるようになった。

「ひまり終わった?」
「うん」
「ちょっとお茶して帰らない?」
「いいよー。今日は凛太郎さんが勤務日だから」
「じゃあ、ご飯食べて帰る?」
「いいねー」

 亜沙美と幼稚園を出て、どこに行こうか? なんて話をしながら歩いている時だった。

「ん?」
「きょろきょろしてどうしたの?」
「なんか視線を感じたの」
「え?」

 二人で辺りを見回すけれど、特に不審な人はいない。

「気のせいかな……」
「気のせいならいいけど、ストーカー女のこともあったし気をつけてね」
「うん」