二人で話がついたようだけど、私には疑問しかない。

「大崎さんからひまりを預かってたってこと」
「え……」
「大崎さん、ひまりを連れて帰るんですよね?」
「はい。ひまり帰ろう。俺達のマンションへ」
「ええ? 荷物が……」
「ふふっ、明日持ってくるから」

 そう言って亜沙美は去って行く。

「ひまり」

 優しい声で久しぶりに凛太郎さんから名前を呼ばれて、涙が溢れそうになった。

 凛太郎さんのことは考えないようにしていたけれど、顔を見ると想いが溢れる。でもここは幼稚園の前で、誰に見られているかわからない。本当はすぐにでも抱きつきたいけれど、ぐっと堪えて我慢した。

 私と手を繋いだ凛太郎さんが、マンションへ向かって歩いていく。幼稚園から見える凛太郎さんのマンションを、敢えて見ないようにしていた。

 繋いだ手から凛太郎さんの温もりが伝わり、私の鼓動は大きく高鳴っている。