出勤したらいつもと変わらない忙しい一日が始まる。忙しいと余計なことを考えなくて済んだ。

 何度スマホを見ても、凛太郎さんからの連絡がない事実だけが、私の心に重くのしかかる。

 でも私が落ち込む暇もないほど、亜沙美が気を遣ってくれていた。

「そろそろ、家を探さなきゃ」
「急にどうしたの?」
「本当は火事のあとすぐに探すべきだったんだけど、甘えちゃったから」
「甘えられるときは甘えたらいいんじゃない? 私は問題ないよ」
「うん……ありがとう」

 まさか亜沙美が凛太郎さんと話をしたと思っていない私は、亜沙美に迷惑が掛かると危惧していた。

 遠慮する私と、責任感のある亜沙美。

 亜沙美のマンションでお世話になって二週間が経ったころ、事態は急展開を迎える――

 朝、朝食を食べながらニュースを見ている時だった。

『港浜消防管轄に勤務する救急隊員の女性がストーカー規制法違反で逮捕されました』

 港浜という地名が聞こえて思わずテレビに視線を向ける。