「ひまり、ひまり」

 誰かが私を呼んでいる。母を思い出すような女性の声に懐かしさを感じた。

「んー」
「ひまり! 早く起きないとシャワーの時間なくなるよ。昨日の服のままシャワーも浴びずに出勤するの? ひまり先生汚いって言われるよ」

 亜沙美の言葉を聞いて飛び起きる。

 そうだった。昨日から亜沙美のマンションに泊めてもことになったのを思い出す。仕事帰りに居酒屋へ寄って、亜沙美に話を聞いてもらったことまでは覚えていた。でも、どうやってここまで帰ってきたのか記憶にない。

 凛太郎さんのことを考える余裕もなく慌てて準備した。

 この時スマホを見ていたら、連絡がなかったことにショックを受けていたかもしれない。

「亜沙美、もう少し早く起こしてくれたら良かったのに!」
「気持ち良さそうに寝てたからギリギリまでと思って」

 準備が整っている亜沙美に恨めしい視線を向けたけれど、敢えてギリギリに起こしてくれたのだとは気づけなかった。